コンポストとは?
毎日のように出る生ごみ。それを捨ててしまわず、自分の手でリサイクルするのが、生ごみコンポストです。
最近では、丁寧でサステナブルな暮らしをしている方のSNSやブログでコンポストの話が登場することが多く、気になっていらっしゃる方も多いのではないでしょうか?
でも、コンポストってどんなもので、どんなメリット・デメリットがあるのか、実際やってみるとどんな感じになるのか、など、気になることがいろいろあって、手が出せない人も多いと思います。
そこで、
① コンポストって何?
② なぜ今、注目されているのか?
➂ どんな種類があるのか?
④ メリット・デメリット
⑤ 初心者におススメのコンポスト
について、ご紹介します。
① コンポストって何?
コンポストとは、生ごみや枯れ葉など有機物の“ごみ”を、微生物や小さな動物(ミミズなど)に分解してもらうことによって、有用な”資源“に変えることを言います。いわば、生ごみのリサイクルとも言えます。
また、英語のcompostは、名詞で使うときは、コンポストに使う容器や、できあがった資源(=堆肥)のことも指しています。
実は、自然界では、別に人間がいなくとも、生き物の命が終われば他の動物や微生物の力で分解され、次の命を形作る物質になっていきます。
コンポストとは、人間の手で微生物が働きやすい環境を整えることによって、より早く分解が進み、人間が使いやすい資源ができるよう、しくみ化したのものなんです。
例えば、庭に穴を掘って生ごみを埋めたり、畑の隅に収穫後の茎や葉を重ねて置くスペースを作ったりしている方は多いですが、これらはもっともシンプルなタイプのコンポスト。
その他、今は、様々な形の容器を使うものがあります。みみずコンポストなど動物の力を借りているものもあります。
②なぜ今、注目されているのか?
現代の大量生産・大量廃棄によって、環境破壊や気候変動が起きていることに疑問を持ち、モノを大事にする丁寧な暮らしを志向する人が増えています。
量り売りのお店に行ったり、洋服を染め直したり、古いものを修理して使い続けたりと、いろいろなとりくみがありますが、コンポストもその中のひとつです。
たくさん出る生ごみを、ただ捨てているのはもったいないと感じ、自分の手で土に還し、循環を作り出すことに喜びと癒しを感じる人が多いのです。
また、国や地域レベルでも生ごみコンポストは注目されています。
生ごみの重量の8~9割は水分です。日本ではこの重くて燃えにくいゴミが、燃えるゴミの4割を占めているのが現状。その収集・運搬・焼却に多くの化石燃料が使われています。
生ごみコンポストがあれば、ゴミ処理にともなう二酸化炭素の排出を減らすことができます。またゴミ処理に使われる税金も減らしていけます。
そこで、多くの自治体が生ごみコンポストに助成金をつけて推奨したり、コンポスト講座を開催して市民に情報提供をしたりしています。
分別回収してまとめて堆肥化したり、バイオ発電を行うなど先進的な自治体もありますが、コンポストは個人レベルでゼロウェイストを推進するとりくみなんです。
(ちなみに・・・生ごみのはいった重いゴミ袋を収集する清掃員の方のご苦労はいかばかりかと思います。コンポストをやっている方の中には、自分のごみで清掃員の方に大変な思いをさせたくないと思って始めた方も結構いらっしゃるんですよ。)
➂ どんな種類があるの?
■庭置き型日本でもよく見かけるのがこのタイプ。プラスチック製の釣り鐘型の形状で、地面に埋め込んで使います。上のふたをあけ、生ごみをいれ、その上に土や枯れ葉を重ねます。(発酵状態がよいときは生ごみだけでOK)
いっぱいになったら、一か月以上寝かせると堆肥ができます。
■木枠型
欧米の庭でよく見かけるタイプがこちらです。
木や網で枠を作り、そこに、Brown(炭素成分が多いもの)とGreen(窒素成分が多いもの)をミルフィーユ状に交互に重ねていきます。
Brown・・・枯れ葉や枝、紙など
Green・・・野菜・果物の皮や葉、食べ残しの料理など、いわゆる生ごみ
重ねておくと、下のほうから堆肥化していきます。
かき混ぜて空気をいれることで、分解が速まります。
■キエーロ
キエーロは、箱にいれた土の中に生ごみをいれて分解するスタイルのコンポスト。
「生ごみ 消えろ!」から名づけられたもので、神奈川県葉山町に住む松本信夫さんが考案し、全国にユーザーが広がっています。
(キエーロ葉山HPより)
この図の通り、透明なふたを斜めにとりつけ、サイドから風を通すのが特徴です。ふたを通して、中の土に太陽光をあてて温めることで分解を促進し、風で土の表面を乾かすことで消臭効果があります。
土にもともといる多様な微生物が生ごみを、ほぼ全量分解していくため、ずっと使っていっても土が増えないため、消滅型コンポストともいわれています。
土は交換の必要がないため、手間もランニングコストもかかりません。
キエーロにはふたつのタイプがあります。
①土置き型
底がないタイプで、土の上に直接置いて使います。
下の土と一体となって生ゴミ分解ができるため、水気がかなり多い生ごみもたくさんいれられる安心タイプです。
②底あり型
底がついているタイプです。テラスなどに置きます。玄関脇のコンクリートスペースに置きたいときにも良いですね。
他にも、プランターを転用するなどいろいろバリエーションがあります。
コンポストフレンズでは、土置き型、底あり型両タイプのキエーロを販売しております。販売ページはこちらです。
キエーロの普及を進める団体「キエーロオフィシャル」公式サイトはこちらです。キエーロのついての様々な情報が出ています。
■段ボールコンポスト
段ボールに、基材(ココピートや竹チップ、もみ殻燻炭など)をいれ、そこに生ごみを混ぜていきます。 生ごみを入れ続け、分解が遅くなってきたら、新しい基材と交換します。
使い終わった基材は3週間ほど熟成させると堆肥になり、畑や園芸に使えます。
安価に始められるのがメリットですが、段ボールが劣化したら箱自体の交換が必要です。
■バッグ型コンポスト
段ボールコンポストの進化系といえるコンポストで、コンパクトかつ持ち運びができる画期的なコンポストです。
通気性のある不織布でできており、中に基材をいれて、生ごみをいれていきます。
普通のトートバッグくらいのサイズですが、なんと1~3か月も生ごみの投入が可能。実際やってみると、どんどん水分が蒸発していくため、生ごみのかさが減って、入れ続けられることに驚きます。
微生物が分解中に熱を出すため、バッグがほかほか暖かくなってくるのも楽しいところです。
生ごみが分解しにくくなったら、いったん、投入をとめて熟成にはいります。
3週間ほど熟成すると堆肥ができ、土と混ぜて菜園や園芸に使えます。
代表的なのがこちら
【LFCコンポスト】
株式会社ローカルフードサイクリングの製品で、中にいれる基材とセットになっています。
コンポストの販売だけでなく、堆肥回収会やイベント、自治体連携など幅広い活動を展開し、コンポストのユーザー層を広げています。
LFCコンポストHP
【AgriPoucherコンポスト】
株式会社地球Laboの製品です。
国内PETリサイクル素材を使用し、日本国内で縫製した丈夫なバッグ。
こちらは中にいれる基材は、土をベースにしています。
置く場所は、室内でも屋外でもOK。屋外の場合は雨の当たらない場所に置きます。(夏場は直射日光の当たりすぎない場所に置くと良いです。)
コンポストフレンズのアグリポーチャー販売ページはこちらです。
■密閉式バケツ型
ホームセンターでよく売られているタイプです。
プラスチックのバケツにふたがついたような形で、下に小さな蛇口がついていて、発酵液を出せるようになっています。
「ぼかし肥」という良い肥料ができ、海外でも「BOKASHI」と呼ばれて人気があります。
容器の中に、生ごみと発酵促進剤をいれ、密閉します。時々、下の蛇口から発酵液を出し、水で薄めて液肥として使います。 密閉して酸素がない嫌気状態になっているため、生ごみが漬物のような状態で発酵していきます。
容器がいっぱいになったら、中身を取り出して、土に埋め、そこで好気分解させると肥料になります。
■回転式
ハンドルで回転させる方式です。
内部に生ごみなどGreen素材と、落ち葉やおがくずなどのBrown素材をいれ、回転させることで空気をよく通して分解を促進します。
■みみずコンポスト
みみずをいれた容器に生ごみをいれていきます。
みみずは、畑や庭の土などで見かけるみみずとは種類が違う、シマミミズというタイプです。(通販で買うことができます)
みみずは毎日、自分の体重の半分の量の餌を食べるそうです。人間で考えるとすごい量ですね。この食欲でどんどん生ごみを分解してくれます。
みみずが健康に生きていけるよう、厚さ対策などケアをしてあげる必要があります。
④ コンポストのメリット・デメリット
【メリット】
*家から出るゴミが減る ゴミ袋代も節約できる
燃えるごみの4割が生ごみなので、一気にゴミが減り、ゴミ出しがとても楽になります。生ごみがないため、臭いや腐敗を心配する必要もありません。
*良質の堆肥ができるので、家庭菜園・ガーデニングに使える
コンポストをしていれば、肥料や土壌再生材を買う必要がなくなります。土の中の微生物が増え、健康な土壌になっていくため、保水力と水はけがよくなり、作物の病気も少なくなります。
*防災インフラにもなる
災害時にゴミ収集が止まっても、自分で生ごみを処理できます。
*土や微生物の世界に触れられる
毎日、分解の様子を見ていると、生き物の循環の姿を目の当たりにし、生態系や土壌について関心が高まります。
*コンポスト仲間ができる。
コンポストをやっている人を見つけると、すぐに仲間になれて、話が尽きません。イベントや交流会も開かれています。
【デメリット】
*生ごみをわけておく手間がかかる
といっても、キッチンカウンターの上に生ごみストッカーを置き、最初から分けていれれば、簡単です。ただ、一口大程度に切っておいたほうが良いため、そこだけ少し手間が増えます。
* 場所をとる
キエーロや庭置き型コンポスター、木枠タイプは場所をとります。バッグ型であれば、スペースはそれほどいりません。
*分解量に限りがある。
微生物やミミズという生き物の力を使っているので、それぞれのコンポストに適正量があります。また、冬場は微生物の活動量が減るため、分解量が減ります。
入れすぎて、なかなか分解しないなと思ったら、しばらく投入をとめて休ませます。
*虫が来る
私の経験では、まったく1匹も虫がこない種類のコンポストはないです。
(密閉式は室内でやっている途中は虫が来ませんが、外で土に埋めると虫がよって来ます。)
虫は自然界の強力な分解者たちで、そこに食べるものがあれば寄ってきますし、食べ物がなくなってしまえば、自然にどこかに行ってしまいます。
虫に彼らの食べ物があることに気づかれないよう、キエーロであれば、生ごみが上に出ないようしっかり埋めたり、バッグ型であればファスナーをきちんと閉めることが対策になります。
そして、少しの虫は、「分解しに来てくれたんだな」と見守るくらいのおおらかさがあると、コンポストを長く続けることができます。
⑤ 初心者におススメのコンポスト
いろいろな種類がある中から、初心者に(そして、かつてコンポストで挫折したことがある方にも!)おススメのコンポストは、こちらの二つです。
■キエーロ
庭や広めのベランダなど、スペースがある方にはおすすめです。
生ごみや食べ残し、揚げ油などもどんどん投入できます。
初期費用はかかりますが、土の交換をしなくてよいためランニングコストがかかりません。
なるべく手間をかけたくない、という方におススメのコンポストです。
りんご箱をアップサイクルした、コンパクトなキエーロもあります。(横幅60センチ程度)
■バッグ型
小さいスペースで始めたい方におすすめです。
雨に当たらないベランダでやる他、玄関の土間など室内でやっている方もいます。
定期的な基材交換と、堆肥の熟成が必要ですが、慣れれば簡単な作業です。野菜やガーデニングに使えるとても良い堆肥になりますよ。
コンポストフレンズのアグリポーチャー販売ページはこちらです。
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いかがでしょうか?
コンポストは、やってみると意外に簡単で、とても楽しいですよ。
コンポストのある楽しい暮らしのセレクトショップ「コンポストフレンズ」では、キエーロやバッグ型など、初心者でも簡単にできるコンポストの販売や、手作りワークショップを開催しています。
ぜひ、コンポストで、循環する暮らしを始めてみてくださいね。
筆者:コンポストコーディネーター/コンポストフレンズ店主
西川美和子